2015/10/30

道具は哲学である

ドラム製作をしていると、頻繁にラグ類の付け外しを行う。
昔は小型ドライバーを使っていたが、とにかく指が疲れてしまう。
その後電動ドライバーに変更したものの、外すには良いものの取り付け時は使いにくい。
そこで、スピンナー付きラチェットの登場となった。



六角ボルト7mm用ソケット。
これでほとんどのメーカーに対応できる。
さらに早回し用にスピンナーを装着。これが大事。


TONEのスピンナーが気に入っている。
ローレットのグリップがひと際効いてて、厚さも薄めで扱いやすい。


ラチェット本体は大好きなアストロプロダクツ製。

ラチェットハンドルを用いる利点は、以下の通りである。
 ①締めてあるスクリューを容易に緩められる
 ②全てのスクリューを同じトルクで締めることができる
 ③十字穴を温存できる

特に②は大切で、スピンナーでぎゅっと締めて、最後にハンドルで
少しだけクイッと増し締めをして、トルクを揃えることができる。
ちなみにハンドルで強く締め上げると確実にラグを破損するので要注意。

余談だが、製作しているドラムは六角、プラスネジどちらでも回せるように
アプセットボルトを採用している。
最近のカスタムメーカーなどではデザインを重視してか
六角穴ボルトを採用しているところを時折見かけるが
適したサイズの六角レンチを現場で常備しているドラマーってどれだけいるのか疑問に思う。
スクリューが緩んでいた時、回したいのに回せないのは大きなストレス。
いろんな状況を想定して、プラスドライバー、レンチ、ソケットなど
複数の工具を利用できるタイプのスクリューの方が、絶対的に親切。


左のものは、レンチ1号機で「インチ規格用」。
Vintage Ludwigとか、Porkpieとかインチ規格の六角ネジを扱うときに使用する。
インチ規格というものを知らず、市販のどのソケットを使ってもスクリューに合わず
ホームセンター往復を繰り返したあの日ww

何事も数多くの経験の上で成り立つもの。
一見無駄に思える経験も、意外なところで花開くものだ。

2015/10/14

Be Deepened



PearlのFree floatingシステムは、スネアドラムの実験には有用な存在。

例えば打面側エッジ形状の違いを試すときに
ボトムヘッドのエッジやテンションなどの諸条件が固定されるため
同条件下での比較対照が行いやすい。
即ち、同仕様のシェルを2つ用意して、エッジ形状やフィニッシュに差を付けて
組み込んで音出し、それが及ぼす影響を掌握することができる。

シェルにパーツ類が固定されないため鳴りを妨げないという
ナイスアイデアを具現化した商品だが
残念ながら欠点も存在し、アルミ台座が支えている故に
どんなシェルを付けても、金属胴の音が加えられてしまう。
木胴の音が欲しい時に、どっち付かずの音になってしまう要素も。
逆の言い方をすると、あれほど小体積のアルミ台座もよく鳴っているとも言えるが。
最近はあまり使っていないけれども、久しぶりに引っ張り出してきた。

そのFree floatingに6.5インチシェルを装着したら、かなりの深胴に。
これは圧倒的な存在感。
見た目は深さ8インチくらいのExtra deepに見える。
(実際は7インチしかないが。)

3年間温めてきたオリジナルエッジ形状をやっと試す。
仮説が実証されれば、本格的にラグ付けする予定。

2015/10/08

媚薬



最近、ドラムエッジ用グリスの開発をしている。
様々なものを調合して調整中である。基剤は医療用高純度ペースト。
木材、金属、樹脂などいかなる素材も侵さないことは基本中の基本。
あとは塗りやすい粘度と、経時的変化が少ないことがポイントか。

グリスを塗布することによって、音に変化が出るとは思わないが
明らかにエッジとヘッドのコンタクトは向上するだろう。
加えて、互いの摩擦抵抗を軽減するため、余計な応力が生じない。
双方にとってやさしい存在。

エッジがつややかになることに快感を感じている、変態的な近頃。

2015/10/04

The exquisite one


以前作ったマホガニーシェルのスネア。
14×6.5インチで、あえて6テンション。

Ludwig pioneerスネアの太いサウンドに惚れ込み
現代のシェルで、高精度のエッジを施した6テンションスネアを作ったら
もっと素敵な音で鳴るだろうと思い、制作した。

シェルはマホガニーにメイプルのレインフォースメント。
エッジは飽きがこないようにオーソドックスな形状にすることに決め
太めの外側ラウンドエッジに、内角45度に設定。

最初はエッジトップを鋭角にしていたが、最近ややフラットに変更して全体に丸みを持たせた。
エッジレベルはヴィンテージとは異なり、完璧なる水平。
ラグには60年代の魂を封じ込ませた。(意味不明)

結果は、思惑通りのやさしく太い鳴り。
他の同サイズのスネアとは一線を画す、独特の音。
テンション数が少ないため、ぼやけた音になりやすく
それなりにテンションをかけた方がいい鳴り方をする。

やっぱり6テンションって素晴らしい。